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裁判ニュース  No.7 2006.10/1号

9月7日 結審 最終準備書面・最終意見陳述書提出
11月2日 判決予定


●2005年3月に始まった 中野区長を訴えていた裁判が、
 9月7日(第13回公判)で、審査が完結し、
 11月2日に判決が出ることになりました。
 以下は、私たちが裁判所に提出した最終意見陳述書の全文と
 最終準備書面の一部抜粋です。


平成17年(行ウ)第70号・第232号 損害賠償請求住民訴訟事件
原告 遠山親雄 他1名・参加人 大畑きぬ代 他9名
被告 中野区長

東京地方裁判所民事第3部B係御中 原告側最終意見陳述書 2006年9月7日

はじめに
 中野区は7、8年前から財政事情の悪化を理由に、住民福祉という自治体本来の仕事を放棄して「行政改革」を進め、職員人件費を削減してきました.。
 その「行政改革」の最中に総務部の中心幹部が出勤偽装事件を起こし、しかも周囲から容認されてきたのです。この事件は地方公務員幹部としての倫理性が、三重四重に問われている事件だといわなければなりません。
 私たち住民の最初の疑いは、なぜ長い間出勤偽装が続いたのか? なぜ発見されなかったのか? という点でした。 この疑いは裁判の中でやっと解けてきました。

第1 事件の性格
この事件は、無断欠勤参事への総務課長(当時)の同情心から出た単なる出勤偽装事件ではなく、行政の中心幹部層のなれ合いと何人もの不作為、あるいは作為とによって仕組まれ、しかも、それらを隠そうとした給与不正支給事件でした。
 1.最初の区側準備書面の主張した事前協議・単独犯行説は、
   後から出た関係者事情聴取の資料で崩れました。
   協議したのは無断欠勤初日であり、出勤扱いは部長の指示。
   やはり原告側の主張した共同謀議だったのです。
 2.また同じ事情聴取の資料によって、出勤偽装行為が
   「通常通りの給与支給」を意図していたことも明確になりました。
 3.懲戒分限委員会がこれらの点を伏せてまとめたものを、
   助役が6月9日議会の総務委員会で報告。不正打刻の行為を
   「不適正な処理ではあるが」
   「あることを意図して、(それを)目的に…したという意味の不正とは
   認識していない」と過小評価し、
   不正打刻の行為を仮措置として容認する説明をしています。
 4.2月16日からの無断欠勤が半月続いても事故報告書を部長は出さず、
   課長は欠勤者宅に職員を派遣もせず、
   2月3月の月末出勤簿処理は課長がごまかします。
 5.4月、人事異動の時に、その課長が後任課長に
   無届け欠勤者のことをどう伝えたからか、
   無打刻が発見されたとする4月14日まで後任課長は何もしていません。
   同室の参事二人もそうです。
   発見されると、動き出すのです。不思議というより異常です。
 6.4月14日に無打刻が発見されたのに、
   90万円余という高い給与は4月分でも減らず、
   5月分の、半額48万円余まで出ています。(後日過支給額返還)

第2 有給休暇承認・休職処分の問題
 1.平成16年12月13日付けの監査委員報告が指摘しているように、
   有給休暇は事前申請が原則です。
   このことは、職員課長にもなった無断欠勤参事の熟知するところであり、
   病気などの事情を考慮しても、せいぜい2週間くらいが限度ではないですか。
   それを、3ヶ月も過ぎてから事後承認するとは、
   社会的な常識を大きく越えています。
 2.休職処分も、区側の言う「社会通念上容認しうる範囲で遡及」したものと
   認めることはできません。区側の主張を認めるなら、
   過去に遡る処分が年度まで踏み越えて可能になってしまいます。
   しかも本件の場合、休職処分は
   無断欠勤の参事本人にとって実質的に有利なのです。
   また、熊本地裁判決を逆手に取った区側の解釈も、同意できません。

第3 区長の責任
区長は、事故報告書を受け取る前日の5月6日に、有給休暇の承認と休職処分をしました。区長は、年度まで遡及して決算、しかも「便宜上」と言う理由で決済日まで遡及したのです。これは公文書の偽造ではありませんか。このような形で決裁してしまった区長の責任は極めて重い。こう指摘して発言を終わります。


●不正な出勤簿の処理等を組織的に
      隠蔽しようとする工作が行われた(最終準備書面一部抜粋)


①出勤簿への虚偽記載を主に行なっていた訴外課長は、
  2004年4月1日付けで総務課長から区長室長に配転となり、
  出勤簿の虚偽の記載が続けられなくなったことから、
  不正が区役所内で広く知られるようになった。
  そのため、不正を隠蔽するための工作が組織的に行なわれた。
 
②隠蔽工作の内容は、訴外課長らによる不正打刻は無く
  訴外参事の無断欠勤もなかったというものである。
  具体的には、訴外参事が2004年2月6日にケガをしてから
  病気休暇、有給休暇の取得、休職処分の各手続きを自らの意思で
  遅滞することなく直ちに行なったというものであり、
  訴外参事の有給休暇と病気休職について実質的な権限を有する
  中野区役所幹部が工作を立案した。
 
③上記の隠蔽工作を実行するため
  有給休暇と病気休職の期間をあらかじめ決めた上で、
  2004年4月14日に訴外同僚参事が訴外参事に、
  休職処分のための手続き書類を取りにくるよう連絡し、
  同22日に来庁した訴外参事にその書類を交付した。そして、
  あらかじめ決めた休職期間にあわせて用意させた
  医師の診断書等を添付させて虚偽の日付による休職の申出と
  虚偽の日付による休職処分の起案決定を行なうなどして、
  無断欠勤と不正打刻が無かったこととなる隠蔽工作を、
  2004年5月6日頃実行した。
 
④上記の隠蔽工作の実行によって、
  無断欠勤と不正打刻そのものが無かったものとし、
  職員に対する懲戒処分も何ら必要がなくなるはずであった。
  しかし、2004年4月29日
  「リフォーム中野BBS」というインターネット上の掲示板に、
  匿名の中野区役所職員による、出勤偽装を告発する
  書き込みがなされていたことが後に明らかになった。
  これによって、不正打刻問題が区役所外に知られるおそれが出てきた。
  中野区役所幹部は完全な隠蔽をあきらめ、
  当事者である訴外課長、訴外部、関与した訴外課長の部下の職員などに対する
  懲戒処分を行なわざるを得なくなった。
 
⑤隠蔽工作を企てた中野区役所幹部は、
  もともとは有給休暇と休職処分の遡及適用を考えていたわけではなく、
  当初は全く適法に、かつ日付を遡ることもなく、
  有給休暇の承認と休職処分がなされたことにするつもりであった。
   したがって、当初の意図からすれば、休職処分の起案決定文書が
  平成16年5月6日付ではなく平成16年3月10日付で作成されることは
  当然である。しかし、完全な隠蔽工作が不可能になったため、
  虚偽の日付による違法無効な休職処分の起案決定などを行なったという
  矛盾が生じている。
  被告は原告ら区民だけでなく区議会に対しても、
  この矛盾が明らかになることを避けるために、
  休職処分の日付について説明することを巧妙に回避してきたが、
  監査委員会の監査結果が休職処分の起案決定文書の問題を
  初めて明らかにした。

■■■次回・判決予定 東京地裁606法廷
◇◇◇11月2日(木) 午後1時20分
◇◇◇傍聴よろしくお願いします

by ombudsnakano | 2006-10-01 17:48 | 裁判ニュース  

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